2010-01-01から1年間の記事一覧

夕暮れ(戸田彬弘)

若き映像集団「チーズfilm」の新作、『夕暮れ』の劇場公開が始まります。平城遷都1300年にまつわる作品ということで、奈良を皮切りに、大阪(九条)、東京(渋谷)と順次公開。 私は、4/3(土)13:00〜「ならまちセンター」での先行上映で、ポストトー…

ハート・ロッカー(キャスリン・ビグロー)

イラクに駐留する爆発処理班の米兵の葛藤。裏腹の関係にあるともいえるだろう、自爆テロに任命された若者の葛藤を描いた『パレスチナ・ナウ』を思い出しながら見ていた(前者はアカデミー賞受賞、一方後者はアカデミー賞候補となることに反対署名運動が起こ…

インビクタス/負けざる者たち(クリント・イーストウッド)

これは、ネルソン・マンデラの映画ではない。 この作品を見ても、マンデラの業績や足跡、手腕など、マンデラがどういう人物だったのかを、われわれがすでに知っている以上に知ることはできない。有名な27年間の獄中生活も、回想シーンがあるだけだ(「約3…

アバター(ジェイムズ・キャメロン)

162分にわたる、壮大な「アトラクション」である。 決して否定的な意味で言っているのではない。冒頭から思わず、驚嘆の声をもらさずにいられない、精巧でハイパーリアルな3D映像からは、自ら複眼的な二つレンズ付きの重いカメラを背負い、さまざまな角…

イエローキッド(真利子哲也)

評判通りのエネルギッシュなフィルムである。 黒沢清に師事する28歳の若き監督による、東京藝大大学院の卒業制作。制作費200万円、10日間で撮りあげたという。「シネマ・シンジケート」(全国独立系映画館主のネットワーク)が、最も将来性を期待され…

抱擁のかけら(ペドロ・アルモドバル)

アルモドバルの新作である。 結論からいえば、おそらく賛否両論だろう。過去の名作や巨匠、女優たちにオマージュ、自らの旧作にまで及ぶコラージュ(かけら)の数々。まさに、「すべては起こってしまった」とばかりの引用の織物だ。 映画監督マテオと大富豪…

哲学への権利(西山雄二)

先日、神戸大学で上映会が行われた、「国際哲学コレージュ」についてのインタビューフィルム。「国際哲学コレージュ」は、1983年にジャック・デリダらがパリで創設した、半官半民の研究教育機関。議長(3年ごとに交代)と50名のディレクター(6年ご…

下女(キム・ギヨン)

「大阪アジアン映画祭2010」のプレ企画で上映された、1960年の作品。 キム・ギヨン(金綺泳)作品ははじめて見たが、なるほど韓国映画界の「怪物」という異名をもつだけあって、確かに興味深い「怪作」であった。 四人家族の幸福な家庭。夫は、紡績…

鈴木貞美に反論する(その2)

私はまた書評で次のように書いた。《他の「妄説」への批判も大同小異なのだが、本書の問題点を違う角度からもう一つだけ挙げておく。「妄説」からの脱却をはかり、「読者の頭の隅にこびりついているそれらの日本近代の「神話」の残り滓を速やかに洗い流して…

鈴木貞美に反論する(その1)

今月号の『新潮』に、一月号に掲載された私の書評に対する鈴木貞美の反論が出た。案の定、完全に議論はすれ違っている。 はじめに断わっておくが、私は書評とは解説や概説ではないと考えている。そもそも、紙幅は限られているので、切り口は限定的とならざる…

チェンジリング(クリント・イーストウッド) その2

(その1の続き) それは、まさに息子が「チェンジリング=取り替え」可能なこと、それ自体である。いったい、どういうことか。 彼女の元に「戻された」少年は、まったく別の家出少年であったことが判明する。さらに、本当の息子をめぐる事態は、にわかに一…

〝改革〟幻想との対決(武井昭夫)

“改革”幻想との対決―武井昭夫状況論集2001‐2009作者: 武井昭夫出版社/メーカー: スペース伽耶発売日: 2009/10/01メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 69回この商品を含むブログ (2件) を見る映画芸術 2010年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: 編集プロダクシ…

チェンジリング(クリント・イーストウッド) その1

最近、映画を見に行けていないので、改めて、昨年の映画の中でも圧巻だったこの傑作を、2回にわたって。 「真実の物語」と始まるこの作品のストーリーは、きわめてシンプルだ。失踪した息子を5ヶ月後に警察が発見、だが連れ戻されたのは別の子だった。母は…

ひとりで生きる(ヴィターリー・カネフスキー)

もう、何度見たことだろう。 九条、シネ・ヌーヴォで「カネフスキー特集」と聞いて、また行ってしまった。映画館にかかる度に見に行っているが(それでも日本での上映は15年ぶりのようだ)、カネフスキーは、見るたびに私の中の何かを刺激する。行ったこと…

行旅死亡人(井土紀州)

「行旅死亡人」とは、「飢え、寒さ、病気もしくは自殺や他殺と推定される原因で、氏名や住所、本籍地など判明せず、遺体の引き取り手もいない死者をさす」。映画のチラシには、さらに「社会のセーフティネットが壊れた現在、その数はますます増えるだろう」…

迫川尚子 写真展 「日計り ―空隔の街・新宿―」

今年もよろしくお願いします!新年早々、写真展のお知らせです。 以前『日計り』という素晴らしい写真集を出された、迫川尚子さんの写真展が開かれます。 写真に興味のある方、東京にお住まいの方はぜひこの機会に。 私もぜひ見にいきたいと思っています。 …