2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

物語と悪――王殺し「後」の中上健次 その3

これはもう、被差別部落出身の人間の条件かもしれないんですけど、それがなぜ物語の主人公となって、いわゆる王子としか言いようのないような響きを持ってくるのか。単にそれは、みなし児であったり、私生児であったりすることが、読者にかわいそうだと思わ…

物語と悪――王殺し「後」の中上健次 その2

「神の死」以降の近代においては、「王殺し」は不可避的な帰結である。王は、神を担保にしてのみ王なのだから(その意味で「王権」とは本来的に「神授」である)、背後を支える神(大文字の他者)が不在ならば、王の根拠も不在であり、王には常にすでにスラ…

物語と悪――王殺し「後」の中上健次

三島由紀夫も中上健次も、父(親)の文学がないこと、子の文学しかないことに愚直にぶつかった。 三島 動物的な家父長、そうなったら文学など要らない。父親になろうという欲求があるのは当たりまえで、どんなサラリーマンでもそういう欲求を持っている。左…