2021-09-01から1ヶ月間の記事一覧

性急さについて――金井美恵子へ向って一歩前進二歩後退 その2

完全犯罪とは奇妙なものだ。それが真に「完全」なら、「犯罪」そのものが無と化すからだ。『絢爛の椅子』の敬夫を苦しめるのは、まさにこのことだ。 電話をかけたのがミステークであると思っても、それは今さらしかたのないことであり、最初の犯罪が迷宮入り…

性急さについて――金井美恵子へ向って一歩前進二歩後退

小説を読む、ことばを書く (金井美恵子エッセイ・コレクション[1964−2013] 3 (全4巻)) 作者:金井 美恵子 平凡社 Amazon 作者と語り手は別のものだ。そんなことは、今さら言うまでもない。どんな小説の「教科書」にも書かれている。だが、この言葉自体が、両…