2024-01-01から1年間の記事一覧
東浩紀や浅田彰が、すでに連載中から指摘していたとおり、柄谷の『探究Ⅰ』においては「他者(性)」という言葉でもって、商品aとbとの間の通訳不可能な矛盾、敵対が中心に論じられていたものの、『探究Ⅱ』『探究Ⅲ』と進むにしたがって、両者の「他者性=敵対…
ここで「貨幣」空間における「多様性と(いう)全体主義」の問題を、性の空間へと移行させよう。現在はそちらの方がアクチュアルなのは間違いないが、そこにも疎外論とそれからの脱却という同型の問題が看取できる。 例えばスラヴォイ・ジジェクは、性の多様…
『貨幣空間』(2000年)の仲正昌樹は、ゾーン=レーテルの「貨幣」を、マルクスよりステージの進んだ位相で「社会的諸関係の総体」(以下の引用の「社会関係=X」に当たる)を捉えようとした試みとして論じている。長くなるが引用しよう。 〈労働力〉から〈…
以前も書いたことだが、柄谷行人の思考も、こうした疎外論からの脱却の試みとして捉えることができる(「柄谷行人とフーコー」『収容所文学論』)。例えば、柄谷は自らの『探究Ⅰ』から『探究Ⅱ』への移行について、次のように言及している。 『探究Ⅱ』では、…
スポーツも文化も社会も「多様性」「多様性」の大合唱である。だが、前回の三島のエントリーにからめれば、三島は、「多様性」が「全体主義」と不可分であることを喝破していた。というか、三島は、基本的にマイノリティー問題を「ヒューマニズム=疎外論」…
三島由紀夫 政治と革命 河出書房新社 Amazon 以前、拙稿「疎外された天皇 三島由紀夫と新右翼」が掲載された『文藝別冊 三島由紀夫1970』(2020年、河出書房新社)が、このたび増補・改題のうえ単行本化されました。 拙稿も再録されています。 三島は、「…彼…
映画『ありふれた教室』が好評である。批評家やライターにも、概ねそのクォリティの高さが評価されている。だが、ラストシーンの不気味さについては、あまり言及されていないように思える。 ラスト近く、教師のカーラが、数学の得意な生徒オスカーに貸し与え…
院生時代にお世話になった杉野要吉先生が亡くなった(三月四日)。 奥様もご高齢のため、弔問等は一切遠慮いただいているという。 先生の研究の核心は、中野重治と平野謙、すなわち転向論だろう。「転向」など誰も見向きもしなくなったにもかかわらず、いま…
われわれの今日が、精神分析の創始者フロイトの、特異な、例外的な歴史的個性によ」る「学問的であると同時に政治的なある力、サイードがオリエンタリズムと呼ぶものの作用によって一般の世界認識から隠蔽されていることが、彼にとってぬきさしならない問題…
出口の見えないガザの状況から、またしてもサイードが盛んに呼び戻されている。例えば、篠田英朗は「オリエンタリズム」をキーワードとして、現状を次のように分析する。 欧米諸国の指導者たちは、イラクやアフガニスタンでの失敗から、「オリエンタリズムの…