2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

遅すぎる、早すぎる――小柳玲子と石原吉郎 その9

小柳もまた、石原の「のちの散文の仕事はあくまで詩の付録だと思っている」と言ったが、小柳の「付録」は、吉本の「虚偽=余計」とは決定的に異なっている。小柳は最初から、石原の詩の言葉は「地下に測り知れない泥沼を抱えて」おり、「言葉たちは地底の闇…

遅すぎる、早すぎる――小柳玲子と石原吉郎 その8

石原は自分にしか関心がなく、自閉的で内向的な詩を書いたのではない。石原においては、はなから他者を「表現=代弁」などできないというところから言葉が発されているのである。だから、石原は別に、自己と他者を、表現可能か不可能かで区別していなかった…

遅すぎる、早すぎる――小柳玲子と石原吉郎 その7

「棒をのんだ話」に戻れば、夕方六時に棒を抜かれた「僕」は、さんざん泣きはらした後、それが「僕にとっては自由というもののはじまりかもしれない」と思いつつ、「おもてへとび出して行く」。そして「奇妙に動物的なものの気配が、僕のからだのどこかでか…