2015-05-01から1ヶ月間の記事一覧

海にかかる霧(シム・ソンボ) その2

すると、ラストシーンも意味深長になる。6年後、ドンシクは、ホンメとの約束の地九老にやってきていた。そして、子供にラーメンを食べさせる女性に目を奪われる。 後ろ姿の女性は「ホンメ」で、ドンシクと目が合う子供は、あのとき不安と恐怖にかられて、互…

海にかかる霧(シム・ソンボ) その1

あの『殺人の追憶』の脚本、シム・ソンボが初監督、ポン・ジュノが共同脚本と製作に回っている。ポン・ジュノ組らしく、韓国社会の暗部をえぐり取るような作品だ。そうした視点抜きに見るならば、本作はハリウッドまがいのパニック映画にしか見えないだろう…

子午線 vol.3 原理・形態・批評

子午線 vol.3―原理・形態・批評出版社/メーカー: 子午線 原理・形態・批評発売日: 2015/05メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る 「大阪都構想、是か非か」をめぐる住民投票が終わった。特徴的だったのは、それが勝者も敗者もともに「民主主義…

神々のたそがれ(アレクセイ・ゲルマン) その3

ルマータが、他の観察者(地球人)と決別するという作品の展開は、また、ロシアのみならず日本の1930年代をも想起させてやまない。当時の日本文学を席巻した「芸術と実行」や「政治と文学」といった問題である。 平野謙は、中野重治と「政治と文学」論争を交…

神々のたそがれ(アレクセイ・ゲルマン) その2

前作『フルスタリョフ、車を!』で、ゲルマンは、スターリンが自らの排せつ物に塗れて死んでゆく姿を描いた。これほどまでに、スターリンの死を惨めに描いた作品もないだろう。 スターリンの死を、まさにこれこそ「神の死」だとばかりに、即物=汚物的に描い…

神々のたそがれ(アレクセイ・ゲルマン) その1

このとてつもない怪物的な映像を、いったいどのような言葉で捉えればいいのか。何度見ても、途方に暮れてしまう。 ゲルマンは国内外で「反ソ」の作家と目されてきた。確かに、長編第一作『七番目の道連れ』(1967)で、早くも達成二年後に裏切られた革命を描…