2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

地獄でなぜ悪い(園子温)その1

途中から映画館が一体となっていることが分かる。 「よーい」という掛け声の後「スタート」が聞こえるまでの「間」、観客全員が固唾をのんで見守っているのが肌で感じられる。こんなに見ていて体が火照ってくる映画もひさしぶりだ。 パゾリーニのデビュー作…

クロニクル(ジョシュ・トランク)

ハイスクールで周囲からいじめられ、疎外されている青年がいる。 ある日、超能力を手にし、友達も出来、人気者にもなり、空も飛べるようになる。彼はその力で、食物連鎖の頂点=最大捕食者にならんと、妄想を肥大化させていくだろう。シンプルな展開。子供の…

凶悪(白石和彌)

『殺人の追憶』(ポン・ジュノ)のような、エンタメでありながら骨太の日本映画を目指したという。そして、それは成功している。 若松孝二に師事したこの監督は、あるとき裁判員裁判のことを調べていて、事件に関係のない人々を法廷に招き入れ、より公平な裁…

そして父になる(是枝裕和)

父はエス(無意識)である――。 子供の「とり違え」が分かってから、逡巡はあるものの、結局「良多」(福山雅治)は「実の子」を選ぼうとする。仕事で育児に熱心でなかった彼は、息子の「慶多」との間がしっくりといってはいなかった分、妻に比べると「血統」…

エリジウム(ニール・ブロムカンプ)

評価が軒並み低い。 設定、物語、パワードスーツや戦闘シーン、要は「世界」の構築が甘い? いや、この監督は、前作『第9地区』同様、未来を見せているわけでも、もっといえばフィクションをやりたいわけでもない。現在存在する世界の矛盾を、半ば本気で考…

重信房子 メイ 足立正生のアナバシス そして映像のない27年間(エリック・ボードレール)その2

日本赤軍は、「根拠地」を求めて第三世界に向かったと言われる。だが、その根拠地とは、最初から遠征=彷徨をはらんだ「無根拠地」だった。バディウ『世紀』の訳者・長原豊の注にもあるように、アナバシス=anabaseは、base=根拠地をめぐるさまざまな運動(…

スターリン言語学について

津村喬氏が、ブログ(9月29日の記事)http://kikoubunka.jugem.jp/ で、田中克彦『「スターリン言語学」精読』に触れているのを目にし、「ああ、こんなことを考えていてもいいんだ」と勝手に「承認」を得たような気になって、以前書きかけて放り出してあ…