diary

被害者メンタリティーについて

「自分こそ被害者」という「被害者メンタリティー」が蔓延している。コミュニケ―ション社会においては、誰もが明確な「位置」を取り得ない。そこでは、人は常に「買い手」に立とうとする欲動に突き動かされている。「被害者」の位置に立つことは、いわば常に…

ポジティヴであることについて

現在、ポジティヴであること、行動的、意志的であることを、否定的に捉える人は少ないだろう。それは、時代の空気として、そうあらねばならないようなイデオロギーとして機能しているとすら言える。ならば、このイデオロギーが生まれたのはいつなのか。 少な…

『異邦人』論争下の花田清輝

武井昭夫が、はじめて花田清輝の話を聞いたのは、ちょうど中村光夫と広津和郎による『異邦人』論争のさなかだったという。 新日本文学会の大会でそれをめぐる議論の途中、花田が「射殺されたアラブ人の立場からものを見ろ、その立場から論じた人が一人でもあ…

スターリン言語学について

津村喬氏が、ブログ(9月29日の記事)http://kikoubunka.jugem.jp/ で、田中克彦『「スターリン言語学」精読』に触れているのを目にし、「ああ、こんなことを考えていてもいいんだ」と勝手に「承認」を得たような気になって、以前書きかけて放り出してあ…

大学に押し寄せるネオリベの波

週刊読書人(9月13日号)の1面座談会「大学に押し寄せるネオリベの波――早稲田大学「雇い止め問題」と日本映画大学「誓約書問題」に対して」は、大学の人間として見ないふりは済まされない。「波」が、すぐそこまで来ている切迫感に満ちている。四人の参加…

新たなビッグブラザーについて

情況別冊 思想理論編 第2号(2013年6月号別冊)変革のための総合誌 現代政治経済(学)批判出版社/メーカー: 情況出版発売日: 2013/07メディア: 単行本この商品を含むブログを見る TPP交渉において、開かれた「自由」貿易の名のもとに、知的財産権の閉ざされ…

『風立ちぬ』のタバコをめぐって

『風立ちぬ』のタバコをめぐって議論が起きている。 その喫煙シーンについて、日本禁煙学会からクレームがつき、今度はそれに対する反論が、喫煙文化研究会からなされたという。 1970年に始まったWHOのタバコ規制活動以降、今や嫌煙運動はグローバル化し…

田山花袋『蒲団』について その2

その1のような事実があったとしても、『蒲団』は、同時代的には、「此の一篇は肉の人、赤裸々の人間の大胆なる懺悔録」として、「美醜矯める所なき描写が、一歩を進めて専ら醜を描くに傾いた自然派の一面は、遺憾なく此の篇に代表させられてゐる」と見なさ…

田山花袋『蒲団』について

学会や研究者にとってはもはや常識なのだろうが、花袋『蒲団』の、例の蒲団の匂いを嗅ぐ場面が、赤裸々な「告白」どころか、ゾラの模倣とは知らなかった。 柏木隆雄「ゾラ、紅葉、荷風」(『ゾラの可能性――表象・科学・身体』所収、2005年)は、「花袋を告白…

参院選原発ツイートについて

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130708-00000079-mai-pol原発ツイートがトップだからといって、「ツイート数自体が「世論」を映し出しているものではない」とか、「ツイッター上の話題からネット上の「世論」を探るという考え方自体が間違っているのか…