三島由紀夫 政治と革命
以前、拙稿「疎外された天皇 三島由紀夫と新右翼」が掲載された『文藝別冊 三島由紀夫1970』(2020年、河出書房新社)が、このたび増補・改題のうえ単行本化されました。
拙稿も再録されています。
三島は、「…彼ら(注―左翼)は、日本で一つでも疎外集団を見つけると、それに襲いかかって、それを革命に利用しようとするほか考えない」(「反革命宣言」1969年)と言った。1968年以降、現在をも規定する(マイノリティー運動へとつながる)疎外革命論=ヒューマニズムとの対決をはかったわけだ。高名な「文化概念としての天皇」とは、これに対する三島なりの回答である。したがって、現在の二重苦より三重苦、三重苦より四重苦といった疎外論の隆盛を思考するためにも、三島のロジックはいまだ重要な参照先だろう。拙稿ではそのようなことを論じた。
今回増補・掲載された、短文「STAGE-LEFT IS RIGHT FROM AUDIENCE」(1969年)を見ても、いかに三島が、左右ないまぜになっていく渦中で思考し実践しようとしていたかを痛感する。現在の大学が、「新らしい大学立法は、共産党系の教授が、何ら良心の苛責なく、すべてを政府権力のせゐにして、警察機動隊を学内に導入して、うるさい新左翼を追つ払ふ口実に使われてゐる」といった一文と無縁だと思う人間は、もはや誰もいないだろう。