2013-08-01から1ヶ月間の記事一覧

もうひとつの世界(ジュゼッペ・ピッチョーニ)

「もうひとつの世界」といっても、可能世界の話ではない。 「カテリーナ」は、終身誓願を控えた見習い修道女。ある日ミラノの公園を歩いていると、ジョギング中の男に、捨て子の赤ん坊を押し付けられてしまう。結婚も子育てもあり得ない「修道院=もうひとつ…

トゥ・ザ・ワンダー(テレンス・マリック)

一見、美しすぎて退屈な環境映像のようだ。だが、この映像作家の画面では、不思議と何かが立ち騒ぐ。自然や風景がのっぺりと表面的ではなく、質感と奥行きをもって迫ってくるからだ。だが理由はそれだけではない。 映画は、パリに暮らす美しい女性「マリーナ…

終戦のエンペラー(ピーター・ウェーバー)

冒頭、戦後にマッカーサー(トミー・リー・ジョーンズ)の部下としてGHQで働くことになるフェラーズ(マシュー・フォックス)が、大学時代にアメリカのキャンパスで見そめた「アヤ」(初音映莉子)を、竹やぶの奥まで追いかけていく。彼は、「日本」とい…

ももいろそらを(小林啓一) その2

(その1の続き) 最初の30万円が、登場人物たちの中を転がっていく過程がうまい。金は、さまざまな比率・割合で分割・分配され、また貸し借りによって人物間を移動しながらふくれていき、その度に人間関係にパワーバランスの変化をもたらす。 それは、フ…

『風立ちぬ』のタバコをめぐって

『風立ちぬ』のタバコをめぐって議論が起きている。 その喫煙シーンについて、日本禁煙学会からクレームがつき、今度はそれに対する反論が、喫煙文化研究会からなされたという。 1970年に始まったWHOのタバコ規制活動以降、今や嫌煙運動はグローバル化し…

ももいろそらを(小林啓一) その1

新たな青春映画の傑作だ。 この作品の魅力は、何といっても、女子高生三人組のリアルなマシンガントークだろう。三人が、それぞれのキャラを演じながら(そのうちの一人「蓮実」は、その日の気分で呼び名も変える)、瞬間瞬間で妙にハイになったり、落ちこん…

映画『立候補』(藤岡利充)

2011年の大阪府知事選に立候補した泡沫候補たちを追うドキュメンタリーだ。 本作は、同じく選挙のドキュメンタリーとして、一見『選挙』『選挙2』(想田和弘)に似ているようだが、その実決定的に異なっている。後者が、選挙=代表制民主主義の論理を自明と…

風立ちぬ(宮崎駿)

主人公「二郎」の妻「菜穂子」の声を担当した瀧本美織が、あるTV番組で映画の紹介を求められ、「堀越二郎さんと堀辰雄さんの人生をごちゃまぜにして、…」と言っていた。あまりに率直なコメントで、思わず苦笑してしまった。 それにしても、なぜ零戦の設計…

熱波(ミゲル・ゴメス)

モノクロで懐かしい映像なのに、こんなのは見たことないという新しさ。 現代のリスボンを描く第一部「楽園の喪失」と、それとすべてが対照的な、植民地時代の禁断の恋を描く第二部「楽園」の二部構成。 冒頭、妻の死の思い出から、限りなく遠く離れようとア…