2013-07-01から1ヶ月間の記事一覧

詩と、人間の同意(稲川方人)

映画芸術 2013年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 編集プロダクション映芸発売日: 2013/07/30メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る 今号の「映画芸術」に、上記書評「文学にならなくて 私はなんらかまわない」が掲載されています。

戦争と一人の女(井上淳一)

素朴な疑問についてのみ述べる。 本作は、戦争を背景とするエロと悪(暴力)がテーマだが、果たして原作の坂口安吾に、エロと悪はあるのだろうか。むしろ、安吾は、エロと悪を描けなかった作家ではないか。彼は、ほとんどピューリタンのように純粋で潔癖な男…

3人のアンヌ(ホン・サンス)

映画関係者が、こぞってこの監督を称賛するのは、いったい何なのだろう。 例えば、それは、作品に見られる「差異と反復」として語られる。なるほど、この新作にしても『次の朝は他人』にしても、同じシチュエーションのもとで、同じ人物らが、同じような出来…

田山花袋『蒲団』について その2

その1のような事実があったとしても、『蒲団』は、同時代的には、「此の一篇は肉の人、赤裸々の人間の大胆なる懺悔録」として、「美醜矯める所なき描写が、一歩を進めて専ら醜を描くに傾いた自然派の一面は、遺憾なく此の篇に代表させられてゐる」と見なさ…

田山花袋『蒲団』について

学会や研究者にとってはもはや常識なのだろうが、花袋『蒲団』の、例の蒲団の匂いを嗅ぐ場面が、赤裸々な「告白」どころか、ゾラの模倣とは知らなかった。 柏木隆雄「ゾラ、紅葉、荷風」(『ゾラの可能性――表象・科学・身体』所収、2005年)は、「花袋を告白…

参院選原発ツイートについて

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130708-00000079-mai-pol原発ツイートがトップだからといって、「ツイート数自体が「世論」を映し出しているものではない」とか、「ツイッター上の話題からネット上の「世論」を探るという考え方自体が間違っているのか…

欲望のバージニア(ジョン・ヒルコート)

1931年、禁酒法時代のバージニア州。 上から、ハワード(ジェイソン・クラーク)、フォレスト(トム・ハーディ)、ジャック(シャイア・ラブーフ)のボンデュラント三兄弟は、密造酒を製造、販売していた。むろん非合法だが、すでに冒頭から地元警察も公認、…

2011危うく夢見た一年(スラヴォイ・ジジェク)その2

いったい、エジプトはどうなっていくのか。性急な希望から、安易な失望に論調、展望は変わりつつあるようだが。 すでに述べたが、われわれは、過去数十年、リベラルな形態(南アフリカからフィリピンに到るまで)であれ、原理主義的な形態(イラン)であれ、…

オブリビオン(ジョセフ・コシンスキー)

2077年の地球は、60年前の地震や津波、また宇宙人(スカヴ)の侵略に対する核攻撃によって、もはや人類自体が住めなくなっている。生き残った人類は土星へ移住、ジャック・ハーパー(トム・クルーズ)は、いまだ続くスカヴの侵略を警戒しながら、無人となっ…