詩と、人間の同意(稲川方人)

詩と、人間の同意

詩と、人間の同意


 次号の「映画芸術」に書評を書いたので、ここではごく簡単にとどめるが、とにかく久々に信頼できる言葉を読んだ。最後の二編などは、とても涙なしには読めないが、同時に非常にすがすがしい。

 もちろん、「いまは無産者のひとりでしかない」という詩人の言葉に、安易に「同意」することは許されないだろう。詩人は、「同意」と同じくらい、厳しく「断絶」を希求しているのだ。その言葉は、結果的に「階級を擁護すること」で権力に貢献するだろう、「マイノリティ」や「格差社会」といった言葉すら受けつけない、「階級の「外部」」(詩人・古賀忠昭と「同意」する場所だ)から発せられている。

 震災と原発事故の後に、「資本主義の最終的で限界的な姿であり、さらには「議会制民主主義」自体の最終的で限界的な姿」を見るこの詩人の言葉は、ジジェク『2011 危うく夢見た一年』と重ね合わせて読まれるべきだろう。

中島一夫