2014-01-01から1年間の記事一覧

技術は、人間に総動員を要請する

「週刊読書人」3月7日号「論潮」に、上記今月の論壇時評が掲載されています。

ほとりの朔子(深田晃司)

前作『歓待』も、家に転がりこんでくる闖入者によって、家全体に化学反応が起こっていく話だった。今回も監督は、「朔子」(二階堂ふみ)を親元から引き離し、夏の終わり、海と山のほとりにある主人のいない家に置いてみたのだ。そして前作同様、今作の朔子…

スノーピアサー(ポン・ジュノ)

いったい、列車に等級制があったのはいつ頃だろうか。 日本では、1872年の鉄道開業時には、客車は上等、中等、下等の三等級に区分されていた。それが、1897年に一等、二等、三等に変わる。「下等」の名称が、乗客の感情を害するためだったという。また、誤乗…

エレニの帰郷(テオ・アンゲロプロス)

すべての死者と生者に、過去と現在に、誰もに等しくあまねく雪が降る。無音で静謐なエンドロールがあたり一帯を包み込む。「これが遺作だ」という事実を、観客は静かにかみしめる。 「二十世紀三部作」の第二篇だった今作のあとに、いったいアンゲロプロスは…

日本映画2013ベストテン&ワーストテン

映画芸術 2014年 02月号 [雑誌]出版社/メーカー: 編集プロダクション映芸発売日: 2014/01/30メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る 今号の「映画芸術」誌上の上記企画に参加、順位と選評が掲載されています。 こちらがベストに選んだものが全体で…

冷戦後を生きはじめた言論空間

「週刊読書人」の1月31日号の「論潮」に、上記今月の論壇時評が掲載されています。

大理石の男(アンジェイ・ワイダ) その2

このストから「連帯」結成までが、続く『鉄の男』の主題であり、そこではアグニェシカが、グダンスク造船所で出会ったビルトークの息子「マチェック」(言うまでもなく、『灰とダイヤモンド』の主人公と同じ名)と結婚、しかも彼はストライキの指導者という…

大理石の男(アンジェイ・ワイダ) その1

「ポーランド映画祭2013」が大阪で開催されたので、この機会に改めて、ワイダの『地下水道』(1957年)、『灰とダイヤモンド』(1958年)、『大理石の男』(1976年)、『鉄の男』(1981年)をまとめて見た。 四作はそれぞれ、第二次大戦下のワルシャワ蜂起、…

オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ(ジム・ジャームッシュ)

かつての輝きはないかもしれない。物語も単調だろう。 だが、そのクールな映像と音楽は、一度この世界のソファーに、アダム(トム・ヒドルストン)とイブ(ティルダ・スウィントン)のように身を沈めてしまうと、いつまでも浸っていたくなる。 『創世記』の…