2020-01-01から1年間の記事一覧

中村光夫、三島由紀夫、転向 その2

中村との対談の二年前、一九六五年から、三島は「太陽と鉄」という、自称「告白と批評との中間形態」を発表し始める。冒頭はこうだ。 このごろ私は、どうしても小説という客観的芸術ジャンルでは表現しにくいもののもろもろの堆積を、自分のうちに感じてきは…

中村光夫、三島由紀夫、転向 その1

三島由紀夫は、中村光夫との対談(『対談・人間と文学』一九六八年)で、日本の小説家がプルーストのように自我が崩壊しなかったのは、「左翼からの転向」があったからだと述べている。 自分はイデオロギーで戦って、イエデオロギーで罰せられて転向を迫られ…

全共闘、三島由紀夫、村上一郎

奥野健男は、東大全共闘と三島由紀夫、そして村上一郎の「三者」関係について、次のように述べている。 三島由紀夫は全共闘の過激派が革命的暴力行動にいっせいに蜂起するのを望んでいた。それ故に昭和四十四年六月、東大駒場まで行って全共闘の学生たちと討…

柄谷行人と韓国文学

柄谷行人と韓国文学 作者:ジョ・ヨンイル 出版社/メーカー: インスクリプト 発売日: 2019/11/30 メディア: 単行本 上記の書評が、「週刊読書人」2月21日号に掲載されています(以下、ウェブ版に全文掲載)。 dokushojin.com

恋人たちは濡れた(神代辰巳)

院生の修論を読みながら、ひさびさにこの映画のことを考えていた。 冒頭、主人公の「克」が、何度も何度も後ろを振り返りながら自転車をこいでいる。何かから逃げているようなその姿は、明らかに翌年(1974年)の『青春の蹉跌』と同型である。『青春』のショ…

パラサイト 半地下の家族(ポン・ジュノ)

韓国の半地下住宅は、もともと朴正熙の軍事政権時代、「北」の脅威に備えるための防空壕だった。それがやがて、とりわけIMF危機以降、社会の格差拡大とともに、低所得者層の住宅へとスライドしていったのである。つまり、「半地下」とは、軍事政権から民…