近畿大学文芸学部文芸フェスタ2009松浦寿輝トークイベント〜松浦寿輝 夢の書法〜

近畿大学文芸学部でイベントを行います。学内外問わず、参加できます。

日時:12月9日(水) 16:30〜18:30
場所:近畿大学文芸学部 A館301教室
ゲスト:松浦寿輝氏(作家、詩人、批評家、東京大学大学院教授)

松浦氏講演のあと、松浦氏、八角聡仁氏(近畿大学教授、批評家)、学生2名によるトークセッション

松浦氏プロフィール:
1954年東京生まれ。1995年に『折口信夫論』で三島賞、2000年に『花腐し』で芥川賞、2009年に『吃水都市』で萩原朔太郎賞受賞、その他映画批評など多方面で活躍。


(以下は当日のパンフレットのための文章です)

 丹生谷貴志から聞いた話だが、松浦寿輝は、「三島由紀夫の幽霊を見た」という伝説の持ち主だそうだ。実際は定かではないが、期せずして、この逸話は松浦文学の核心を射抜いている。

 三島は、ある意味で生前から「幽霊」であった。原爆という世界の「終り」の後に生き残ってしまった三島は、もはや「終り」自体を終らせるほかはなく、ついには自らの死という「終り」すらパロディにしてしまったのだ。
 三島の幽霊を「見た」という松浦寿輝は、ならば、そうした「終り」の不在そのものを葬り去ったといえるのではないか。

――「過去など最初からないのである。いや、「最初」だの「最後」だのといったものも存在しないのである」(「死」)――

 「終り」があるとか、ないとか、「始まり」はどうだとか、そんな時間や、順序や、持続や、文脈や、といったものを〈三島の罠〉として終らせること。そして時間の外へ――。
 「その後」というものをあり得なくすることで、その後のすべてを包摂しにかかる「終り」なき三島の後で、松浦寿輝の言葉は、「後」というものを存在せしめる「時間」そのものの「外」へ出ようとする。

中島一夫