2022-05-01から1ヶ月間の記事一覧

「二階」と人民戦線――小津、蓮實、志賀 その4

監督協会には、東京側からは、内田吐夢、小津安二郎、清水宏、成瀬巳喜男らが、関西側からは、伊丹万作、伊藤大輔、溝口健二、山中貞雄らが参加。それまで日本の映画監督は、各会社に雇われた社員であり、彼らを横断的につなぐ組織を持たなかった。それぞれ…

「二階」と人民戦線――小津、蓮實、志賀 その3

いったい、『東京暮色』に何が起こっているのか。このとき頭をよぎるのが、またしても『暗夜行路』である。 小津作品の中でも最も暗く救いのない印象を与える作品。『東京暮色』というよりは、これでは『東京暗夜』と称したいぐらいである。過去の不倫が物語…

「二階」と人民戦線――小津、蓮實、志賀 その2

「二階=上」に昇る「階段」に意味が生じるのは、このように『暗夜行路』において、である。それは、「不義」という性的な問題と明確に結びついている。そして小津は、その「主題」や作品「原理」を含めて、志賀の「二階」や「階段」を「忠実」に反復してい…

「二階」と人民戦線――小津、蓮實、志賀

小津安二郎『風の中の牝鶏』(一九四八年)の戦慄的なシーン―—佐野周二が妻の田中絹代を階段から突き落とす――については、以前戦争と従軍慰安婦との関連で述べた。 knakajii.hatenablog.com 今回は、別の側面から見てみたい。 夫の佐野は、自分の復員前に子…