2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

嘘と転向――冷戦終焉期の大西巨人

『大西巨人 文選2 途上』の「月報」の一文を、大西は「年ごろ私は、〈嘘(非事実ないし非真実)〉に関して幾度も書いた」と書き出している(「〈嘘(非事実ないし非真実)〉をめぐって」)。この一文が書かれたのは「一九九六年九月中旬」だから、「年ごろ…

ペイン・アンド・グローリー(ペドロ・アルモドバル)

脊椎の痛み、何種類もの頭痛、いちいちクッションを差し挟まなければ、床に跪くこともできない。最近は、水を飲んでも喉がつまりせき込んでしまう。喉にしこりがあるのだ。悲鳴をあげ続ける身体は、母から与えられた罰なのか。 主人公サルバドール(アントニ…

制度、リアリズム、転向 その4--私小説≒天皇制という「虚構」

コロナ禍における「西洋」からの「アジア」への差別には、YouTubeやSNSの卑劣な映像や言説を見るにつけても、「いったい、啓蒙された西洋市民社会など、本当にあったのだろうか」という「「近代」への疑惑」(中村光夫)を再び三度抱かずにはいられない。「…