2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧

断食芸人(足立正生)

パレスチナ革命に身を投じたこの監督の新作が、カフカの『断食芸人』を題材にしたものだと知って、やはり、と思った。私もまた、昨年の国会前のハンスト行動を見たとき、『断食芸人』を思い出していた。 修行や健康のためではなく、芸=表現としての断食。 …

サウルの息子(ネメシュ・ラースロー)

ピンボケの画面を男が近づいてくる。 その男、サウルは、アウシュヴィッツ=ビルケナウ絶滅収容所の「ゾンダーコマンド」だ。ガス室の遺体処理や床洗いのために、ユダヤ人で構成された特別部隊で、背中に×印の囚人服を着せられている。 ゾンダーコマンドに指…

マネー・ショート 華麗なる大逆転(アダム・マッケイ)

それにしても、胸糞悪い映画だ。 リーマンショック前夜。ここには、バブルを仕掛けた者と、バブルが崩壊することを望んでいる者しか出てこない。主に後者――バブル崩壊を一足先に察知して、それをまた儲けにつなげた者たち――が主人公たちである。 だが、胸糞…

曖昧な言葉

先日(3月1日)の記事に対して、大杉重男氏から再反論があったようだ。 一言で言えば、私の文章は「曖昧」だという主張だが、特にそれに応えることはない。書き手の不注意も読み手の誤読もありふれたことだ。ただ、私は、大杉氏を「国語の問題として」間違っ…

中村光夫をめぐる誤解

中村光夫が小説家に読まれなくなった理由については、かつて次のようなやり取りがあった。 蓮實重彦 これは必ずしも私小説論には限りませんが、小説理論をおまとめになった『日本の近代小説』とか、『日本の現代小説』とか『小説入門』のなかで「肉声を響か…

大杉重男氏に応えて

『子午線』4号に掲載されている拙論に対する、大杉重男氏のブログ記事を読んだ。http://franzjoseph.blog134.fc2.com/blog-entry-79.html 言うまでもなく、私はこの大杉の論にほぼ全面的に反対である。その理由は拙論を読んでもらえれば分かると思うので全…