2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

おみおくりの作法(ウベルト・パゾリーニ)

ロンドン市ケニントン地区の民生係であるジョン・メイは、孤独死した人々を弔うのが仕事だ。故人の遺品や写真を手ががりに、その人生を思い浮かべては弔辞をしたため、ふさわしいBGMを用意して宗教に沿った葬儀を執り行う。遺族や知人を訪ねて訃報を届け…

現代思想の使命

浅田彰、中沢新一、東浩紀の鼎談「現代思想の使命」(『新潮』4月号)を面白く読んだ。 マルクス主義や毛沢東主義が「知識人の阿片」(レイモン・アロン)として退けられたうえで、今こそドストエフスキーだ(東)、いやニーチェ(的な「末人」)だ(浅田)…

妻への家路(チャン・イーモウ)

ついに中国映画にもテーマとして認知症が入ってきたようだ。中国では、認知症すら政治的となる。 男がトンネルの側溝に身を隠し、轟音をたてて走り去る列車をやり過ごすシーンから始まる。 1976年、「陸焉識」は、二十年間囚われていた収容所から脱走、当局…

さらば、愛の言葉よ(ジャン=リュック・ゴダール) その2

そして、この「自然」と「隠喩」の関係こそ、言葉の表象=代行機能の核心なのだ。どういうことか。それはAをAでは表すことができないという単純な事実による。Aとは何かを表現するためには、Aとは別なる言葉Bでもって「AとはBである」(A(シニフィ…

さらば、愛の言葉よ(ジャン=リュック・ゴダール) その1

原題は「ADIEU AU LANGAGE」だから「さらば言葉よ」。前作『ゴダール・ソシアリスム』同様、ストレートなタイトルだ。言葉という表象=代行システムよ「さらば」。 むろん、われわれは、言葉という表象から逃れることができない。Adieuが、スイスでは「こん…