2013-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ザ・マスター(ポール・トーマス・アンダーソン)

勢いよく上方へと流れる水流が、画面いっぱいに映し出される。水兵の「フレディ」(ホアキン・フェニックス)の視線は、キョロキョロと定まらない。本作のテーマはこの冒頭のシーンに尽きている。 監督は言う。「人は何かマスターという存在なしに生きられる…

愛、アムール(ミヒャエル・ハネケ)

夫婦は、ともに老ける。だが、都合よく同時に老けるわけではない。残酷にも、どちらかが早く衰える。子供がいても、別々に暮らしていれば老老介護になるだろう。それからの人生は、途方もなく長く感じられるのかもしれない。「かくも長き人生…」。 人間の負…

千年の愉楽(若松孝二)

昨年10月17日の突然の事故死を受けて、この監督の神話化、あるいは安易な神話化に抗うとする「神話化」が、映画界を中心になされている。 遺作となったこの美し過ぎる作品は、自らの先行きを予見していたかのように、まさに生と死というひたすら繰り返される…

「述6」 3・11後から見た戦後思想

述〈6〉3・11後から見た戦後思想 (近畿大学国際人文科学研究所紀要)作者: 近畿大学国際人文科学研究所,近畿大国際人文科学研究所=出版社/メーカー: 論創社発売日: 2013/03メディア: 単行本 クリック: 30回この商品を含むブログ (1件) を見る 近畿大学国際人…

ジャンゴ 繋がれざる者(クェンティン・タランティーノ)

前作『イングロリアス・バスターズ』の冒頭から露わになっていた、タランティーノのマカロニ・ウェスタンへのオマージュは、本作で全開となった。 『続・荒野の用心棒』や『黒いジャガー』との関連は、至る所で触れられているので措く。まずもって、CGを使…

ゼロ・ダーク・サーティ(キャスリン・ビグロー)

今回のアカデミー賞作品賞は、『アルゴ』(ベン・アフレック)が獲得した。 先日の『アルゴ』の記事にも書いたが、この作品には、現在のイスラム原理主義の猛威につながる、イラン・イスラム革命を何とか否認したい、そのためには歴史の偽造も辞さないし、C…