2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

ポー川のひかり(エルマンノ・オルミ)

カンヌのグランプリに輝いた、あの『木靴の樹』(1978)のオルミの新作。長篇劇映画としては、これがラストだという。 イタリア、ボローニャの大学図書館で、大量の古文書が、床から机から至るところに張り付けのごとく釘で打ちつけられるという怪事件が勃発…

探究?(柄谷行人)

本当は、モライヨーリの『湖のほとりで』に触れようと思っていたのだが、あまりに凡作だったので書く気が起こらない。イタリアのアカデミーと言われるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞で史上最多の十部門受賞、さらに監督は、あのナンニ・モレッティの弟子だ…

文学の器――現代作家と語る昭和文学の光芒(坂本忠雄)

前に『エンタクシー』誌上で行った、坂口安吾についての座談会が本になりました。文学の器作者: 坂本忠雄出版社/メーカー: 扶桑社発売日: 2009/08/08メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (11件) を見る 目次は以下のとおり。 伊藤整「変容…

精神(想田和弘)

精神科にカメラを入れ、しかも一切モザイクなし、ナレーションも音楽もなし。監督曰く「虚心坦懐」に患者たちを映し出した映像は、それだけで十分画期的なものだ。とにかく、いろいろと考えさせられる映像だった。 とはいえ、この作品の宣伝文句――タブーに踏…

范の犯罪(志賀直哉)

しばらく映画を見に行く暇がなかったので、学生から質問があった志賀の小説について少し。 といっても、触れたいのは、作品そのものについてではない。この機会に目を通してみた、『文学界』(7月号)に掲載された座談会「文学的模擬裁判――法の言葉で殺意を…